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欧米式蟻組
2009/01/28(Wed)
蟻組の抽斗

二つの部材を連結する方法が組み手です。
組み手の方法は無限に存在し、同じ組み手でも作り方は千差万別です。
日本では特に宮大工で世界に例を見ないほど発達しました。
その複雑さ、精巧さには目を見張るものがあり、世界中の大工・木工家のあこがれです。

日本と欧米での組み手の考え方の大きな違いの一つは、組み手を見せるかどうかだと思います。
日本では組み手を見せないのを美徳としているのに対し、欧米では複雑な組み手ほど見えるように作ります。その代表的なものが蟻組(ダブテイルジョイント)でしょう。
見せびらかさず、シンプルに見せることを良しとする日本人の考え方は、欧米に限らず、他の国の人々の価値観では理解できないことの様です。日本人独特の美意識です。

これは民族の根本に関わることと思われます。
僕が北米に住んでいてなじめず、疲れる原因になることの一つがこれに関することです。自分をいかに人に見せ、訴えるかが非常に重要です。しゃべれないことイコール能力がないと思われても仕方ありません。プレゼンはその重要な方法の一つです。

英語では、この組手の一つ一つの形がハトの尾に似ていることから、この名前(ダブテイルジョイント)が付いています。また欧米では、手をかけて作られた抽斗は必ずといっていいほど手加工した蟻組が用いられます。この蟻組は連結する部材の形によって日本ではオス・メス、英語ではピン、テイルと呼ばれます。

変形蟻組

蟻組にも色々なバリエーションがあり、角度が付いたり、曲線になるとかなり手がかかるものになります。

10才の子供が作った蟻組

この写真はロバートの子供二人が10才の時に作った物だそうで驚きました。

蟻組の加工法も数限りなくありますが、この学校の方法の概略を紹介します。
ここのやり方の特徴は時間はかかりますが、初めての人でも隙間なくきれいな蟻組を加工することができることです。

墨付け

まず初めに、蟻組のデザインを考えます。蟻組はジグを使って機械でも切れますが、手加工のメリットを生かすため、蟻の間隔、大きさ、形で違いを出します。真ん中が大きくて端が小さかったりしてもかまいません。故意に直線にしないこともあります。
初めにピンの部分を切って仕上げ、それをテイルに写すため墨付けは鉛筆でかまいません。
抽斗では左右・前後を対称にするため型紙でテンプレートを作ることもあります。

写真は自作の自由定規です。形も気に入っていて使い勝手も上々です。構造はきわめて単純で1時間もあれば5つくらい作れます。

chopping block
胴付きを削る

写真はチョッピングブロックというジグです。垂直に削り落とすのに用います。ジグにノミの裏を当て裏側まで肩を落とします。

包み蟻組

抽斗の前板の包み蟻組の部分には、その厚さに切った板にノミの裏を当てて際まで削ります。

肩を削る

またピンの肩の部分は、ほぞ穴を開ける時に使う、向こう待ちノミを用います。ただ日本のノミはノミの両側と裏が直角でないため、グラインダーを使い直角に修正して使いました。これを使うと驚くほど簡単に肩の部分を正確に削ることができます。
これでピンの部分は完成です。

ピンの仕上がり

次に、ピンを垂直に立て一端を合わせ、十分に先端のとがった鉛筆で、テイルに写し取ります。その後テイルを丁寧に削っていけばほとんど隙間のない蟻組ができます。

ピンをテイルに写す

このやり方で最初に小さな抽斗を作ったときには3日半かかりました。慣れた人でも抽斗一つ切るのに丸一日はかかるようです。
手はかかりますが、Ipodで好きな音楽を聴きながら自分の世界に入り蟻組を切っている時はとても幸せな瞬間です。

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前期の作品 2
2009/01/14(Wed)
前期に制作した作品の続きです。

スティーブ
スティーブ2

カナダ、トロント出身のスティーブの作品です。元コンピューター関係のエンジニア、早期にリタイアして木工を始めました。仕事の効率の良さは見ていてとても参考になります。正面のドアの鏡板はリンゴの木、本体と枠はブラックウォールナット、抽斗の前板はニレの木です。シンプルに見えますが59個の部品から出来ています。これを作る際、マシーンルームでは一度も定規を使わず、すべてストーリースティック(盛り込み棒;長さを本体から実測でひろって印を付けた棒)を使って切るように努めたそうです。定規を使わないのはクレノブスタイルの一つです。

クレイグ
クレイグ2

クレイグの作品です。スウェーデン系のアメリカ人で作品も北欧のデザインを感じさせます。かなり綿密に計算して制作しています。アビュータスという地元の木と抽斗の前板には杢の入ったメープルを使っています。

ブラッド

カナダ、アルバータ出身のブラッドです。自分のベンチのとなりでベンチメートです。制作はかなりラフなスケッチで始まり、作りながらどんどん変化していきます。失敗も多いのですが、取り返しの付く失敗で、それを繰り返しながら作品が出来てい来ます。制作しながら変化していくのもクレノブスタイルです。

ワインキャビネット
ワインキャビネット


自分が制作したものです。本体にニレの木、抽斗の前板にオリーブ、背板にピーカン、取ってにチークを使っています。正面のドアはS状に、側面も曲面に鉋で削り出しています。左右の側面は対称ではありません。
この学校に来るまでは湿度による木の動き以外に木目を気にしたことはほとんどなく、いかに無駄を減らすように木取りするかを考えていました。木目を考えることは今回のテーマの一つです。この作品ではすべてにおいて木目を考え、この小さなキャビネット(450×160×125mm)を作るのに、幅600、長さ1800mm、厚さ55mmのニレを使用しています。信じられるでしょうか。
ここではどのように作ったかは細かくは書きませんが、ほとんどすべての制作行程が日本で学んだものと異なっていました。
また、これを制作する課程で必要な西洋鉋4本、ノミ、ナイフ、自由定規、ダイアゴーナルスティック、ヒンジ、キャッチ、壁掛け用の金具を自作しています。

ファーガル

前回紹介したアイルランド出身、ファーガルの作品です。チークを使用したキャビネットです。トップが日本のカブトやトリイを思わせる形をしています。これに限らず、こちらの創作家具には日本のモチーフを使ったものが数多くあります。たんす・障子・和紙・組子などは好んで用いられます。
抽斗が取り外されていたため内部の写真はとりませんでした。

ジョディ

カナダ、トロント出身で20年以上俳優をしていたジョディーの作品です。マホガニーを使ったコーヒーテーブルです。他にも同じ形のものを作っていますが、そっちの天板にはきれいな彫刻が施されていたした。蟻組の抽斗が一つ付いています。

他にもまだ制作中の作品があるので、完成次第写真をアップしようと思います。

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前期の作品
2009/01/12(Mon)
ここロバーツクリークでは、12月中の例年にない寒さと大雪に見舞われましたが年が明けてからは例年通りの雨が降り続く梅雨のような気候に戻りました。
学校も2週間の休みが終わり、1月5日から後期の授業が始まっています。

日本とは違い後期の初日は大掃除で始まりました。
日本であれば最終日に掃除をして終業式、仕事納めになることに慣れていたので少しびっくりしました。ここでは、最終日は制作、展示会とパーティーで盛り上がって散らかしたまま終了しました。
ささいなことですが、場所が変われば常識も変わるものだと実感しています。

プレゼン

初めの写真は、前期の作品のプレゼンの様子です。
イギリス人のマイケルは自分の斜め向かいのコテージに住んでいます。フォトジャーナリストで世界中を飛び回っていたそうです。奥さんのクリスタルはベルギー人でなんと5カ国語を操り、国境無き医師団のアドミニストレータとして世界の紛争地・途上国を渡り歩いてきたような人です。二人とも常識にはとらわれない自由な雰囲気の持ち主です。二人には今4ヶ月を過ぎたかわいい男の子がいます。
作品は、クウィラという木で作ったウォールキャビネットです。シンプルで細長く、まるでモノクロームの写真をみているかのような光と影を感じさせる作品です。

ニック
以前に紹介したニックの作品です。テーパーした曲面で構成された非常に難しい蟻組の箱です。
本体の材料はアビュータスで、ふたは杢のはいったメープルで出来ています。

バーブ
前回紹介したバーブの作品です。彼女の最初の木工作品ですが非常に仕上がりがきれいです。内部の写真はありませんが、中にも小さな細かい蟻組をした取り外し可能なトレイが仕込まれています。鱗のような木目のレースウッドという木を使っています。

ハンナ
イギリス人のハンナの作品です。ハンナはプロのコンスタレーションアーティストです。彼女は外見も中身もアーティストタイプで、いつ現れ、いついなくなるかだれも予測がつきません。しかし姿は見えなくても、作品は着実に進んでいます。蟻組の小箱で、プラムの木で出来ています。イギリスの自宅に生えていたものだそうです。

ニール
地元カナダ出身のニールの作品です。これもプラムの木を使っています。ふたの部分がカーブした作品です。ニールは弱視というハンディを持っています。理系の出身でいつもなめるように本を読んでいて、博学な知識と数字にはだれも勝てる人がいません。ゆっくり作業を続けており、来年も1年目として続けることが決まっています。

デリック
カナダのウィニペグ出身のデリックです。冬はマイナス30-50度にもなるところだそうです。
彼は美大を卒業してこの学校にやってきました。知的ですが、欧米人にはめずらしく控えめな性格です。アジアの神秘的な思想や日本の美・禅に興味をもっています。
彼の小箱は留め隠し蟻組で出来ています。蟻組が組み手の中に隠されていて外側からは全く分からないようになっています。日本では指物で良く使う組方ですが、欧米では蟻組は見せるもので隠すことは考えられないことのようです。デリックは日本の組み手の本をみて独自に作り方を考えて作りました。彼の思想的な作品です。

他の作品は次回紹介しようと思います。

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